潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎
主に大腸の表層である粘膜から粘膜下層までに起こる炎症で、大腸のびまん性炎症性疾患として厚生労働省の特定疾患に指定されています。「びまん」は局所ではなく広範囲に起こることで、潰瘍性大腸炎は炎症が肛門部から口の方に向かってひろがっていくという特徴を持っています。
病変のある場所により、直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型などに分類され、範囲が広くなるとそれだけ症状を改善するのは難しくなります。
潰瘍性大腸炎は治療でいったん良くなっても、ぶり返すことが多いため、長期間に渡ってコントロールしていく必要があります。
発症は男女に偏りがなく、年齢層も幅広いのですが、発症のピークは20代だとされていますが、近年高齢者でもみられるようになりました。
日本では少ない病気だったのですが、近年は増え続けており、平成25年度末の医療受給者証や登録者証交付件数の合計は166,060人にもなっています。
初期症状としては、下腹部の違和感があり、やがて下痢や便に血が混じるようになります。さらに進むと、便に粘液や膿も混じり始めます。また、発熱や腹痛が起こり、体重減少、貧血なども現れてきます。
そして、関節や皮膚、眼、心筋、すい臓などにも影響を及ぼし始める場合もあります。通常、こうした症状が起こる活動期と、治まっている寛解期を繰り返していきます。そのため、症状が解消したからと治療を中断するのは厳禁です。
はっきりとした原因はまだわかっていませんが、大腸粘膜を白血球が攻撃する自己免疫疾患ではないかと見られています。なんらかの遺伝要因や食生活も関係しているとされており、腸内細菌やストレスの関与も指摘されています。
病歴や身体診察の他、血液検査や便の細菌検査に加えて大腸内視鏡検査、X線やCT検査等の画像検査を行って、総合的に判断します。特に感染性腸炎をはじめとした他の腸の炎症との区別が大切ですので、高い専門性と十分な臨床経験が重要になってきます。
なお、強い症状が出ている場合には、脱水や貧血、栄養障害などの解消を目的とした入院治療が必要になります。
近年多くのお薬が使用できるようになりましたが、炎症が強い場合は免疫を抑えるお薬を使用する場合があります。診断と同様に高い専門性と十分な臨床経験が重要になってきます。